認知症の患者へのケアは、介護をする家族や介護士にとっては、コミュニケーションがとりづらく、一般的な介護ケアよりも難しいといわれています。しかし、周囲と上手く意思疎通ができないと、認知症の方はますます自分の殻に引きこもってしまうので、表情がなくなったり、徘徊などの問題行動も増える傾向にあります。そこで最近は、そんな認知症の方と上手くコミュニケーションを図るために、バリデーション療法という技法が用いられるようになってきているようです。
バリデーション療法は、アメリカのソーシャルワーカーであるナオミ・フェイルが提案したコミュニケーション技法で、14のテクニックを基本にしています。まず、相手の話に傾聴することで患者の気持ちに寄り添い、その都度、患者に共感しながら、心の中の不安や苦しみを認めるということを繰り返すことで、信頼関係を築いていくことを目的にしています。14ものテクニックがあると、それを身につけ実践できるようになるためには、かなりハードルが高いように感じるかもしれませんが、実は全てのテクニックをマスターしなくても問題ありません。患者の様子に合わせて、できることを1つずつ取り入れるようにすれば良いそうです。
認知症を患った方は、傷ついたり、常に不安な気持ちを抱えたりしているので、その気持ちに寄り添ってあげることは、患者の行動の本質を知ることに繋がります。そうすると、より良いケアができるようになるので、認知症の方でもQOLを維持しやすくなるでしょう。また、患者への理解が深まれば、その分手厚い介護ができるので、介護者にとってもメリットが生まれます。